クリニックを成功させるためには、 開業準備 が勝負どころです。経営の基盤を作るための勉強や、自分自身の価値向上、地域とのつながり作りなど、やるべきことは山積みです。特に地方では、準備不足が命取りになります。今回は、現場で実際に開業した視点から、開業準備でやっておくべきことをまとめてみました。

経営の勉強
まずはどんな仕事があるのかを知ること
開業する前はだいたいの方が勤務医で、一般企業で働いた経験はないと思います。
勤務医の時は病院の事務の方が色々なことをやってくれているので、病院を動かすためにはどのようなことが必要かを知ることはありません。そのような状況でいきなりクリニックの経営を始めると、しておかないといけないことが抜けていたりして、あとで痛い目にあいます。
クリニックの一般的な業務は下記のものがあります。
毎月の仕事
- 給与支払い:ネットでの支払いじゃないと大変
- 社会保険料支払い:引き落としできる
- 源泉所得税支払い:e-Taxでの振り込みが必要
- 住民税 (特別徴収) 支払い:eLTAXでの振り込みが必要
- 地代、駐車場代の支払い:自動振り込みにしておくと楽
- シフト決め:勤怠管理ソフト等がないと大変
- レジの両替:レジに必要な5000円札や小銭の両替 (頻繁に必要、けれど銀行での両替は日中しかできない)
- 電子帳簿保存法の対応:入出金の管理 (請求書等を保存する必要あり)
月毎の仕事
- 1月:年末調整分の還付を含めた給与支払い、給与支払報告書の提出、源泉徴収票・法定調書合計表の提出、償却資産申告書の提出
- 2月:酸素の購入額提出
- 4月:(退職者がいた場合に) 給与支払報告書に係る給与所得者異動届出書 提出、固定資産税支払い
- 5月:自動車税支払い
- 6月:労働保険の年度更新、経済構造実態調査の提出、6月分の給与支払いから住民税の額が変わる
- 7月:社会保険算定基礎届提出、労働保険料の支払い
- 10月:麻薬年間届の提出
- 11月:被扶養者資格再確認届
- 12月:年末調整
※ 上記以外にも決算にあわせて、法人税・消費税支払い などの業務あり
開業前に知っておくべき会計と管理の基本
- 自計化と管理会計の理解は必須:現状把握と意思決定を迅速に行うため
- 財務諸表の読み方:キャッシュフローと損益計算の違いを理解
- 数値化による経営:感覚ではなく数字で判断
お勧め書籍
開業前には50冊くらいは本を読みました。正直、やりながら覚えるしかないとは思いますが、どのようなことに注意をすればいいかを事前に知っておくことは、心持ちが全然違います。下記は私が読んだ本の中から一般的なおすすめの本になります。
| 書籍名 | ポイント |
|---|---|
| 医療経営の教科書 | 財務・管理会計の基礎 |
| 診療所経営の教科書 | 現場目線のノウハウ |
| 開業プロフェッショナル | 開業全体の流れがわかる |
自分の価値をあげる
医療費が削られ、医師の働き方改革がすすむなか、クリニックは増加しています。今後、開業制限がかかる可能性もありますが、ある程度の都市では競争が激しくなると予想されます。開業には標榜科目、立地が重要ですが、実際に診てくれる医師が重要であることは間違いありません。
資格・実績で差別化を図る
食事の店選びをネット検索で行うように、受診先のクリニックもまずはインターネットで調べる時代です。なかでも院長の経歴は、多くの患者さんが重視する情報です。どんな医師に診てもらえるのかは非常に大切なポイントですから、経歴はできるだけ充実させておきましょう。
- 出身大学
- 専門医資格の取得:その科の専門医を持っているかどうか、他の領域の専門医資格はどうか
- 大学での経歴:紹介元としての信頼度アップ
- 国内留学や海外留学、地域の有名病院での経歴:なんとなくすごそう、頼りになりそう
- 講演会や執筆:地域での認知度向上につながる
できる診療を増やす
「何科の誰か」ではなく、「どんな場面で頼られる人か」をはっきりさせます。
- 腹痛、胸痛などを診ることができるか
- 必要な検査をしてもらえるか
- 幅広く診てもらえるか
- 家族も診てもらえるか
見た目も大事
かっこいい必要はありません。優しそうか、清潔感があるか、太ってないか (自堕落な感じがないか) はすごく大事です。初診の方はホームページで先生の見た目を確認して、クリニックに行きます。再診の方は受診した時の感じで、再度かかるかどうかを判断します。地域でクリニックがそこしかないなら患者さんは頑張って通ってくださるかもしれませんが、先生に魅力がないと次はありません。
開業予定場所の近くの総合病院で働く
地域の診療フローを体で覚えるのはすごく重要です。紹介・逆紹介の回路づくりはクリニックを経営するうえで資産になります。何より、その病院への紹介が圧倒的にしやすくなります。時間外ぎりぎりの紹介等、勤務医の先生からすると腹がたちますが、知り合いであると紹介しやすいです。
地域医療を肌で感じる
- 勤務経験:紹介患者さんをお願いしやすくなり、逆紹介を獲得しやすくなる
- 地域特性を把握:患者ニーズや医療資源の現状が分かる
- 連携体制の構築:診療情報提供のやりとりがスムーズになる
人脈づくり
紹介や相談がしやすくなるのはもちろん、スタッフの採用にも効果的です。地方では、募集をかけても優秀な医療スタッフがなかなか集まりません。大病院での経験者がクリニックに応募してくることも多くはないでしょう。こうした場合は、過去のつながりに声をかける、あるいは知人の紹介を頼るのが最も有効です。
スタッフや医療関係者との関係構築
- 勤務先の病院で前もって一緒に働いてくれそうな人に声をかけておく
- 医師会・看護協会への参加:支援制度や補助金情報も得やすい
- 学会、勉強会での交流:開業時の人的支援につながる
ホームページ作成
開業後は忙しく、ホームページづくりに時間を割くのは難しくなります。制作自体は業者へ依頼してもよいのですが、ちょっとしたお知らせやブログの更新を自分で手早く編集できる体制を整えておくほうが、SEOの面で圧倒的に有利です。業者任せでは、細かな更新が行き届かないことも少なくありません。
信頼感と利便性を提供するWeb戦略
- まず作るべきページ:診療時間、診療科、院長の顔、駐車場
- 求人応募ページ:スマホで応募できるフォームがあると便利
- ブログやSNS連携:定期的に発信して認知度を上げる
疾患に関するスライドづくり
疾患に関するスライドをつくっておくと、なにかと便利です。いまではAIもありますので、ある程度ひな形を作ってもらい、修正をするだけでも構いません。オリジナルのものを作っておくと、ホームページに載せたり、患者さんに渡したり、プレゼンにも使うことができます。
地域住民への情報提供と集患につなげる
- 健康教室や講演会で使用するスライドを準備
- HPに掲載して医療情報を可視化
- PDFでダウンロードできるようにすればコスト削減
うちではこうする
- できる限り専門医をとり、専門以外の診療の勉強もしておく
- 早めに経営の勉強をしておく (早ければ早いほど良い)
- 開業前に一番近くの総合病院で働く
- 開業準備は最低1年かけて計画的に進める
- スタッフ採用は一緒に働いて優秀な人を確保しておく
- ホームぺージは開業3ヶ月前には自分で作成・完成し、Googleマップ (Google マイビジネス) にも登録
- 自分の診療する症状や疾患のスライドをできるだけたくさん作成しておく
まとめ
開業準備 は大変です。しかし、自分自身と地域への理解を深め、事前にできることを徹底しておくことで、開業後の安定した運営と集患に直結します。開業を志している人は、ぜひしっかり準備をしてのぞんでください。



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