
論文って、全部読む必要はないと思っています。
「概要を知っておく」「知識の引き出しに入れておく」だけでも十分。今回は、そんな“引き出しに入りそうな話題”をいくつかまとめました。
Pubmedへのリンクも貼ってますので詳しく確認したい方はそちらからお願いします。

X (旧Twitter) にも載せています。宜しくお願いします。
- 2025年6月の論文紹介①です
- GLP‑1受容体作動薬と2型糖尿病患者における消化器系がんリスク
- 1型糖尿病患者における膵島移植が合併症および死亡率に与える影響
- 女性における経カテーテル vs 外科的大動脈弁置換術:RHEIA試験
- 早期年齢における便潜血検査(FIT)による大腸がんスクリーニングの長期的効果
- 進行(高リスク)N2–N3領域の鼻咽頭がんにおける術前化学放射線療法(導入化学療法+CCRT) vs 術後補助化学療法を伴う同時化学放射線療法(CCRT+術後化学療法)
- 肛門がんに対する標準照射量 vs 減量照射量化学放射線療法(PLATO‑ACT4試験・短期結果)
- ステージ III 大腸がん補助化学療法における除脂肪体重(LBM)ベースのオキサリプラチン投与が神経毒性に与える影響:第II相ランダム化試験(LEANOX試験)
- 肝細胞癌に対する手術 vs ラジオ波焼灼療法(RFA):SURF-RCTとSURF-Cohort試験
- 低グレード(AAST I–II)結腸外傷に対する一次修復 vs 切除・吻合:管理法は重要か?EAST多施設試験
- まとめ
2025年6月の論文紹介①です
2025年6月に発表された論文から9編をご紹介します。気になったものから読んでみてください。
GLP‑1受容体作動薬と2型糖尿病患者における消化器系がんリスク
背景:GLP‑1受容体作動薬(GLP‑1RA)は血糖・体重管理に有効だが、その消化器系がん予防効果は不明だった。
方法:TriNetXデータベースを用いた後ろ向きコホート研究。GLP‑1RA使用者と他の糖尿病治療薬使用者(例:インスリン、メトホルミンなど)を傾向スコアマッチングし、消化器系がんの発症リスクを比較。
考察:GLP‑1RAの使用はインスリン(aHR 0.29)、メトホルミン(aHR 0.84)、SU(aHR 0.71)、TZD(aHR 0.86)、DPP‑4阻害薬(aHR 0.80)、SGLT‑2阻害薬(aHR 0.80)と比較して消化器がんリスクが有意に低かった。インスリンとの比較で特に顕著。
Diabetologia, 2025年9月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40471238/


GLP‑1受容体作動薬(GLP‑1RA)は消化器癌の発生を抑制する
すごいな やっぱり糖尿病、肥満が消化器癌と関連が強い
1型糖尿病患者における膵島移植が合併症および死亡率に与える影響
背景:不安定型1型糖尿病に対し、膵島移植(IT)が長期的に合併症や死亡率を改善できるかは不明だった。
方法:フランスの3つの臨床試験からIT受給者を抽出し、健常な1型糖尿病患者を傾向スコアでマッチ。単独IT(ITA)61例、腎移植後IT(IAK)45例を10年以上追跡した後ろ向き多施設コホート研究。考察:ITA群では複合アウトカム(死亡・透析・切断など)がHR 0.39、死亡リスクはHR 0.22に有意低下。IAK群では透析リスクがHR 0.19に有意低下。がんリスクの増加は認められなかった。ITの長期的なリスク・利益バランスに有効なエビデンス。
Diabetes Care, 2025年6月1日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40245107/


不安定型1型糖尿病に対し、膵島移植(IT)は死亡リスクを優位に低下させる
iPS細胞で膵島って作れないのかな わくわくするな
女性における経カテーテル vs 外科的大動脈弁置換術:RHEIA試験
背景:重症大動脈弁狭窄症の女性では外科的治療時の合併症リスクが高く、TAVI(経カテーテル大動脈弁植込み術)の利点が不明だった。
方法:女性443名がTAVI群または外科的大動脈弁置換術(SAVR)群に無作為割付(1:1)。主要評価項目は1年の死亡・脳卒中・再入院の複合アウトカム。
考察:1年後、TAVI群の複合イベント発生率は8.9%、SAVR群15.6%、非劣性かつ優越性を示した(差−6.8%、P非劣性<.001、P優越性=.034)。
Eur Heart J., 2025年6月9日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40171878/


重症大動脈弁狭窄症の女性では外科的治療よりTAVI(経カテーテル大動脈弁植込み術)が有用
あとはご年齢とかを考慮して適応をきめるべきかな
早期年齢における便潜血検査(FIT)による大腸がんスクリーニングの長期的効果
背景:若年発症の大腸がん(CRC)が増加する中、推薦される50歳開始前のスクリーニングの有効性は未確立だった。
方法:台湾のコミュニティを対象に、40〜49歳での早期FITスクリーニングと、50歳以降に開始する通常スクリーニングを比較。傾向スコアマッチングおよび非順守補正モデルを用いて2019年まで追跡。
考察:早期スクリーニング群では、大腸がんの発症率(人口10万人年あたり26.1 vs 42.6)と死亡率(3.2 vs 7.4)が有意に低く、傾向スコア調整後でも発症リスク(aRR 0.79、死亡リスク aRR 0.61)が低減。非順守調整モデルでも同様の傾向が確認された。pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
JAMA Oncol., 2025年6月12日(オンライン先行掲載)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40504543/


便潜血検査は40歳代から行う方が大腸がんの発症率、死亡率をさげる
大腸カメラも40歳以上ですべきとおもう
進行(高リスク)N2–N3領域の鼻咽頭がんにおける術前化学放射線療法(導入化学療法+CCRT) vs 術後補助化学療法を伴う同時化学放射線療法(CCRT+術後化学療法)
背景:局所領域進行鼻咽頭がんにおける化学放射線療法の最適なタイミング(術前 vs 術後)は不明だった。
方法:中国の単施設で、ステージT1‑4 N2‑3 M0かつEBV-DNA ≥1500コピー/mLの患者324名を対象に、導入化学療法+CCRT群(n=162)とCCRT+補助化学療法群(n=162)に無作為割付し、3年無増悪生存(PFS)を比較。
考察:3年PFSは導入群73.5%、術後群70.4%(HR 0.86; P = .45)。統計的有意差なし。両戦略とも有効であり、リスクと利益を踏まえて治療法を選択すべき。
JAMA Oncol., 2025年6月18日(オンライン先行公開)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40531520/


局所領域進行鼻咽頭がんに対する化学療法と化学放射線療法は術前、術後どちらも同等の効果あり
ふむ
肛門がんに対する標準照射量 vs 減量照射量化学放射線療法(PLATO‑ACT4試験・短期結果)
背景:早期ステージの肛門扁平上皮がんでは、根治的標準化学放射線療法(sd‑IMRT)は根治率が高いが、急性および長期毒性が大きい可能性があった。
方法:英国28施設で、T1‑2(≤4 cm)N0肛門がん患者を対象に、標準量(50.4 Gy/28回)と減量量(41.4 Gy/23回)のIMRTを併用化学療法(ミトマイシン+カペシタビン)とともに比較する第II相RCT。6カ月時点の完全奏効率、治療中断、急性毒性、患者報告アウトカムを解析。
考察:6カ月完全奏効率は標準群87%、減量群92%。治療中断や化学療法修正、急性Grade≥3毒性は減量照射群でやや少なく、忍容性が高い傾向。腫瘍制御に妥協はなく、長期Locoregional failureデータ待ち。
Lancet Oncol., 2025年6月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40334666/


肛門扁平上皮がんに対する減量照射量化学放射線療法の有効性は従来の治療と同等
ふむ
ステージ III 大腸がん補助化学療法における除脂肪体重(LBM)ベースのオキサリプラチン投与が神経毒性に与える影響:第II相ランダム化試験(LEANOX試験)
背景:オキサリプラチンは神経毒性リスクが高く、体表面積(BSA)基準の投与では除脂肪体重によるオーバードーズが懸念された。
方法:術後ステージ III 大腸がん患者で、LBM低下症例を対象に、BSA基準投与(対照群)とLBMベース投与(3.09 mg/kg LBM)をランダム比較。
考察:LBM基準投与により、Grade ≥2 神経毒性非発症率が67.2% vs 42.1% に改善(P = .01)。神経毒性発症までの時間延長やQOL向上も示された。再発および生存に有意差なし。新たな dosing 戦略として期待。
J Clin Oncol., 2025年8月10日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40540704/


体表面積ではなく除脂肪体重(LBM)ベースのオキサリプラチン投与量は神経毒性をへらし再発抑制や生存延長にも有用
これはかなり意味のある論文 オキサリ8コースで悩まされるしびれが減る
肝細胞癌に対する手術 vs ラジオ波焼灼療法(RFA):SURF-RCTとSURF-Cohort試験
背景:直径≤3cm、結節数≤3の肝細胞癌において、切除術とRFAの治療成績比較は限定的だった。
方法:日本49施設によるRCT(SURF‑RCT、手術150例 vs RFA152例)と、治療選択により登録された観察コホート(SURF‑Cohort)を併用。
考察:5年全生存率は手術74.6%、RFA70.4%(HR 0.96, P = .84)、無再発生存率はそれぞれ42.9% vs 42.7%(HR 0.90, P = .84)で差なし。術後の重篤有害事象は手術群で3.3%、RFA群では報告なし。小型肝癌に対し、RFAは有効な代替。
J Clin Oncol., 2025年8月10日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40554738/


直径≤3cm、結節数≤3の肝細胞癌においては切除じゃなくてRFAでOK
これもすごい RFAの方が安全
低グレード(AAST I–II)結腸外傷に対する一次修復 vs 切除・吻合:管理法は重要か?EAST多施設試験
背景:軽度結腸損傷の最適な治療戦略(一次修復 vs 切除吻合)はまだ論争がある。
方法:2011~2021年の32のトラウマセンターで、AASTグレードI–IIの2,022例を後ろ向き解析。一次修復(PR)群と切除+吻合(RWA)群に分類し、感染合併症や在院日数を評価。
考察:RWA群は手術部位感染、縫合不全、創部離開、在院日数がすべてPR群より有意に多かった。調整後もRWAは独立して悪化した転帰と関連しており、低グレード損傷は一次修復が安全で効果的であることを示唆。
J Trauma Acute Care Surg., 2025年7月1日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40474346/


軽度結腸損傷の最適な治療戦略は切除吻合ではなく一次修復
ふむ
まとめ
GLP‑1受容体作動薬が消化器癌を抑制する。
抗がん剤の量の規定が体表面積ではなく除脂肪体重ベースになる可能性がある。

今回はいろんな方面から論文検索ができました。自分の専門領域以外もアンテナをはっとかないとおいていかれますね。
できることを最大限に。がむしゃら院長でした。



コメント