論文紹介 2025年1月 ②

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今回は、最近の医学論文から臨床に役立つものをピックアップしました。読んでおくだけで明日の診療に活かせるかもしれません。

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2025年1月の 論文紹介 ② です

前回に引き続き、2025年1月に発表された論文から10編をご紹介します。前回は免疫チェックポイント関連が多かったですが、今回は外科系を多く選んでます。気になったものから読んでみてください。

副甲状腺自己移植は甲状腺手術後の副甲状腺機能低下症を予防するか?

タイトル:Does Parathyroid Autotransplantation Prevent Hypoparathyroidism after Thyroid Surgery?
背景:甲状腺手術後の低カルシウム血症予防のため、副甲状腺自家移植が行われることがある。
方法:2015年12月から2023年6月までに全摘または補完的甲状腺切除術を受けた549人を対象に、副甲状腺自家移植の有無による術後低カルシウム血症の発生率を比較。
考察:自家移植群は非移植群と比較して、術後2週間以内の一過性症候性低カルシウム血症の発生率が高かった(38.0% vs. 19.3%)。PACUでのPTH値が10未満の患者における副甲状腺機能回復率は両群間で差がなかった(82.2% vs. 82.5%)。長期的な副甲状腺機能不全の発生率も両群で類似していた(5.3% vs. 3.8%)。

Ann Surg, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39811957/


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副甲状腺自家移植では低Ca血症は防げない。
副甲状腺の温存が重要か。

米国における外科医とその他の医師の離婚

タイトル:Divorce Among Surgeons and Other Physicians in the United States
背景:外科医の離婚率は、他の医師や一般人口と比較して十分に理解されていない。
方法:2017年から2021年の米国国勢調査データを用いた横断的研究。外科医、非外科医師、一般人口の離婚率を比較。年齢、結婚時年齢、性別、人種、収入、週労働時間、子供の数を調整した多変量ロジスティック回帰分析を実施。
考察:外科医の離婚率は21.3%で、非外科医師の17.9%より高かった(リスク比1.19, 95%信頼区間1.11-1.28)。調整後も、外科医は非外科医師より離婚率が22%高かった(オッズ比1.22, 95%信頼区間1.09-1.35)。外科医と医師全体の離婚率は一般人口より低かった。

Ann Surg, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39258369/


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外科医の離婚率が高いのはどの国も一緒か。
でもアメリカでは医師の離婚率は意外と低いんだな。

一般外科手術におけるトラネキサム酸の安全性と有効性

タイトル:Safety and Efficacy of Tranexamic Acid in General Surgery
背景:一般外科手術における周術期出血は一般的であり、トラネキサム酸(TXA)の予防的使用が出血リスクの低減に寄与する可能性がある。
方法:POISE-3試験のサブグループ解析として、45歳以上の心臓外科以外の手術を受ける患者を対象に、TXA 1gを手術開始時と終了時に投与する群とプラセボ群を比較。主要評価項目は生命を脅かす出血、重大な出血、重要臓器への出血の複合。安全性評価項目は術後30日以内の心筋損傷、非出血性脳卒中、末梢動脈血栓症、症候性近位静脈血栓症の複合。
考察:TXA群はプラセボ群と比較して、主要評価項目の発生率が有意に低下(8.0% vs. 10.5%、ハザード比0.74、95%信頼区間0.59-0.93、P=0.01)。安全性評価項目の発生率に有意差は見られなかった(11.9% vs. 12.5%、ハザード比0.95、95%信頼区間0.78-1.16、P=0.63)。

JAMA Surg, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39813061/


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トラネキサム酸1gを手術開始時と終了時に投与すると大出血が減る。
これ流行るかな?微妙だろうな。

早期遠位胃癌に対する迷走神経温存とモニタリングおよびインドシアニングリーンラベリング:無作為臨床試験

タイトル:Vagus Nerve Preservation for Early Distal Gastric Cancer With Monitoring and Indocyanine Green Labeling: A Randomized Clinical Trial
背景:胃癌手術における迷走神経切除は、術後の機能障害や生理的異常を引き起こす可能性がある。
方法:臨床的にcT1N0M0の遠位胃癌患者264人を対象に、迷走神経温存胃切除群(VPG)と迷走神経切除胃切除群(VRG)に無作為に割り付け。術中に神経生理学的モニタリングとインドシアニングリーン(ICG)標識を使用。主要評価項目は術後胃無力症の発生率。
考察:VPG群では、VRG群と比較して、術後胃無力症の発生率が低く(0.8% vs. 7.6%)、胆石形成も少なかった(0% vs. 6.8%)。VPGは、残胃の機能維持と生活の質の向上に寄与する可能性がある。

JAMA Surg, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39535740/


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迷走神経温存をきちんと行うとこんなに差がつくんだ。
けど、術中の神経生理学的モニタリングとICG標識ってどうやってするんだろうか。

切除可能肺癌に対する化学療法とニボルマブ+イピリムマブのネオアジュバント療法との比較

タイトル:Neoadjuvant Nivolumab Plus Ipilimumab Versus Chemotherapy in Resectable Lung Cancer
背景:切除可能な非小細胞肺癌(NSCLC)における術前免疫チェックポイント阻害療法の有効性を評価。
方法:ステージIB-IIIAの切除可能なNSCLC患者221人を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法群(113人)と化学療法群(108人)に無作為に割り付け。主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)と全生存期間(OS)。
考察:中央値49.2ヶ月の追跡期間で、ニボルマブ+イピリムマブ群のEFS中央値は54.8ヶ月、化学療法群は20.9ヶ月(ハザード比0.77)。3年OS率はそれぞれ73%と61%(ハザード比0.73)。

J Clin Oncol, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39778121/


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非小細胞肺癌でも術前化学療法は免疫チェックポイント阻害剤が有用。
各癌腫のガイドラインがどんどん変わりそうですね。

大腸内視鏡検診陰性後の大腸癌発生率と死亡率

タイトル:Colorectal Cancer Incidence and Mortality After Negative Colonoscopy Screening Results
背景:陰性の大腸内視鏡検査(NCS)後の大腸癌(CRC)発生率および死亡率の長期的な推移は十分に理解されていない。
方法:米国の3つの前向きコホート研究(Nurses’ Health Study、Nurses’ Health Study II、Health Professionals Follow-up Study)において、1988年および1991年から2020年まで追跡。NCSを受けた81,151人と内視鏡検査を受けていない114,302人を対象に、CRCの発生率と死亡率を比較。
考察:NCSを受けた群では、受けていない群と比較して、CRCの発生率(ハザード比0.51、95%信頼区間0.44-0.58)および死亡率(ハザード比0.56、95%信頼区間0.46-0.70)が低下していた。このリスク低下効果は20年間持続した。

JAMA Oncol, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39602147/

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一度何もないことを確認してるんだから予後がいいのは当たり前だよね。
この結果から大腸カメラは10年以上のインターバルでいいとはならない。

三尖弁閉鎖不全患者における経カテーテル的三尖弁修復術と外科的三尖弁修復術の比較:2年間の結果

タイトル:Comparison of Transcatheter Versus Surgical Tricuspid Repair Among Patients With Tricuspid Regurgitation: Two-Year Results
背景:三尖弁逆流症(TR)患者における経カテーテル修復術(TTVR)と外科的修復術(STVR)の2年間の転帰を比較。
方法:米国の全国入院サンプルデータベースを用いて、2016年から2018年にTR修復術を受けた患者を対象に、傾向スコアマッチングを行い、TTVR群とSTVR群の2年間の全死亡率、心不全再入院率、合併症発生率を比較。
考察:傾向スコアマッチング後、TTVR群はSTVR群と比較して、2年間の全死亡率(20.3% vs. 25.1%、P=0.03)および心不全再入院率(17.8% vs. 22.4%、P=0.04)が低かった。主要な合併症の発生率に有意差はなかった。

Circ Cardiovasc Interv, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39556351/


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手術よりもカテーテル治療の方がいい?
ランダム化比較試験が必要だけどするの難しそう。

肥満、代謝機能障害に伴う脂肪肝、冠動脈疾患を有する患者における肥満手術と心血管アウトカム: 集団ベースのマッチドコホート研究

タイトル:Bariatric Surgery and Cardiovascular Outcomes in Patients with Obesity, Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease, and Coronary Artery Disease: A Population-Based Matched Cohort Study
背景:肥満および代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を伴う冠状動脈疾患(CAD)患者における減量手術(BS)の心血管転帰への影響を評価。
方法:2005年1月1日から2022年12月31日までにMASLD、肥満(BMI ≥35 kg/m²)、および既存のCADと診断された成人患者を対象に、BS群と非BS群を比較。主要評価項目は、主要有害心血管イベント(MACE)、心不全、脳血管イベント、冠動脈手術の発生率。副次評価項目は全死亡率。
考察:BS群は非BS群と比較して、1年目からMACE、心不全、脳血管疾患、冠動脈手術の発生率が有意に低く、全死亡率も低下。これらの効果は10年間持続した。

Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39832797/


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やっぱり痩せるのが一番。
SGLT2阻害薬、GIP/GLP-1受容体作動薬を使ってだめなら減量手術、って流れがすすむ。

低リスク甲状腺癌患者における放射性ヨウ素を使用しない甲状腺切除術:前向き無作為化ESTIMABL2試験の5年間の追跡調査

タイトル:Thyroidectomy without radioiodine in patients with low-risk thyroid cancer: 5 years of follow-up of the prospective randomised ESTIMABL2 trial
背景:低リスクの分化型甲状腺癌患者における甲状腺全摘術後の放射性ヨウ素(¹³¹I)療法の必要性を評価。
方法:776人の低リスク分化型甲状腺癌患者を対象に、術後に¹³¹I療法を行わない群と行う群に無作為に割り付け。5年間の追跡調査で、イベント(異常な¹³¹I集積、頸部超音波異常、サイログロブリン値の上昇など)の発生率を比較。
考察:5年後、イベントのない患者の割合は、¹³¹I療法なし群で93.2%、あり群で94.8%であり、両群間に有意差はなかった。低リスク患者において、術後の¹³¹I療法を省略しても予後に影響を及ぼさない可能性が示唆された。

Lancet Diabetes Endocrinol, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39586309/


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分化型甲状腺癌の全摘出後では術後の¹³¹I療法は必要ない可能性が高い。
NEJMの2022年3月号で掲載された試験の追跡調査。

くも膜下出血および選択的脳神経外科手術後の腸管薬物吸収:エソメプラゾール薬物動態からの洞察

タイトル:Intestinal Drug Absorption After Subarachnoid Hemorrhage and Elective Neurosurgery: Insights From Esomeprazole Pharmacokinetics
背景:くも膜下出血(SAH)後の腸管運動低下や粘膜機能障害が、経口薬の吸収に影響を及ぼす可能性がある。
方法:SAH患者と選択的脳神経外科手術患者を対象に、エソメプラゾールの薬物動態を評価。血漿中濃度を測定し、腸管吸収の程度を比較。
考察:SAH後、腸管運動低下や粘膜機能障害により、経口薬の吸収が著しく低下することが示唆された。この効果は、出血後7日間持続する可能性があり、臨床医は経口投与薬の効果減弱を考慮すべきである。

Crit Care Med, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39570079/


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症例が少ないし、このトライアルがよくできたなという印象。
研修医の時にSHA後の抗潰瘍薬は静脈投与するようにきつく言われたのが懐かしい。

まとめ

この1か月の間でも多くのエビデンスがでています。

論文って大きな病院で働いていないと目にする機会がほとんどありません。少しでもみなさんの手助けになればと思います。

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クリニックで働いている場合は、チラ見して頭に入れておくことが大事です。
患者さんとの会話でも生かせるかもしれません。

できることを最大限に。がむしゃら院長でした。

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