
日々の診療、お疲れ様です。
忙しいスケジュールの中でも、ちょっと知識をチャージできるといいですよね。簡単にまとめていますので、論文を読むのがめんどくさいという方もチラ見してください。ぜひコーヒーブレイクのお供にどうぞ。
Pubmedへのリンクも貼ってますので詳しく確認したい方はそちらからお願いします。

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- 2025年1月の 論文紹介 ① です
- 慢性閉塞性肺疾患患者におけるデュピルマブの臨床的有効性と安全性:7年間の集団ベースのコホート研究
- 免疫チェックポイント阻害薬による乾癬リスク
- 食道癌における周術期化学療法または術前化学放射線療法
- 無症候性重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術
- 筋層浸潤性尿路上皮癌におけるペムブロリズマブの補助療法と経過観察との比較
- 小児の急性合併症のない虫垂炎に対する虫垂切除術と抗生物質の比較:非盲検、国際、多施設、無作為化、非劣性試験
- 重症孤立性三尖弁閉鎖不全症に対する経カテーテル的修復術(T-TEER): Tri.Fr無作為臨床試験
- 腫瘍微小環境におけるミトコンドリア移入による免疫回避
- 高リスク、早期、ER+ /HER2(-)乳癌におけるペムブロリズマブと化学療法:無作為化第 3 相試験
- 局所進行直腸癌に対するネオアジュバント化学放射線療法とPD-1遮断の併用/非併用:無作為化第2相試験
- まとめ
2025年1月の 論文紹介 ① です
2025年1月に発表された論文から10編をご紹介します。できるだけいろんな方面から選んでますので、気になったものから読んでみてください。
慢性閉塞性肺疾患患者におけるデュピルマブの臨床的有効性と安全性:7年間の集団ベースのコホート研究
タイトル:Clinical effectiveness and safety of dupilumab in patients with chronic obstructive pulmonary disease: A 7-year population-based cohort study
背景:慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者におけるデュピルマブの長期的な有効性と安全性を評価する。
方法:2017年4月から2024年8月までの米国のCOPD患者を対象とした7年間の人口ベースのコホート研究。
考察:デュピルマブは全死亡率の低下、救急受診の減少、急性増悪リスクの低下と関連。
J Allergy Clin Immunol, 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39368553/

デュピルマブはLABA-based therapies と比較して死亡率が減少。
デュピルマブ(dupilumab、商品名: デュピクセント Dupixent)は、アレルギー性疾患の治療のために設計されたヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体。アトピー性皮膚炎に使用される。
免疫チェックポイント阻害薬による乾癬リスク
タイトル:Psoriasis Risk With Immune Checkpoint Inhibitors
背景:免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は自己免疫疾患などの副作用が課題。
方法:2019年1月~2021年6月、台湾の全国健康保険データベースを用いたコホート研究。ステージIIIおよびIVの癌患者が対象。
考察:ICI使用者は乾癬リスクが非使用者の約2倍。
JAMA Dermatol, 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39504056/

乾癬は、皮膚が赤くなり、白いかさぶたができる慢性的な炎症性疾患。
アドヒアランスを向上させるには説明と早期の対応が重要。
食道癌における周術期化学療法または術前化学放射線療法
タイトル:Perioperative Chemotherapy or Preoperative Chemoradiotherapy in Esophageal Cancer
背景:切除可能な局所進行食道腺癌における最適な多モーダル治療法は不明。
方法:第3相多施設ランダム化試験。患者を周術期FLOT化学療法群(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)と術前化学放射線療法群(41.4 Gyの放射線療法、カルボプラチン、パクリタキセル)に1:1で割り付け。主要評価項目は全生存率。
考察:周術期FLOT化学療法は、術前化学放射線療法と比較して、切除可能な食道腺癌患者の生存率を改善。
N Engl J Med, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39842010/

切除可能な食道腺癌において周術期化学療法(FLOTレジメン)と術前化学放射線療法(CROSSレジメン)では術前術後のFLOTの方が予後がいい。
2024年のASCOで発表されたもの。
無症候性重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術
タイトル:Transcatheter Aortic-Valve Replacement for Asymptomatic Severe Aortic Stenosis
背景:無症候性の重度大動脈弁狭窄症患者における経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の有効性を評価。
方法:米国とカナダの75施設で、無症候性の重度大動脈弁狭窄症患者901人を対象に、早期TAVR群と臨床的経過観察群に無作為に割り付け。主要評価項目は死亡、脳卒中、心血管系原因による非計画的入院の複合。
考察:早期TAVRは臨床的経過観察と比較して、主要評価項目の発生率を有意に低下させた。
N Engl J Med, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39466903/

経カテーテル的大動脈弁置換術 (TAVI/TAVR:transcatheter aortic valve implantation/replacement) は有用。
無症候性の重度大動脈弁狭窄症を見つけれるかどうかがポイント。
筋層浸潤性尿路上皮癌におけるペムブロリズマブの補助療法と経過観察との比較
タイトル:Adjuvant Pembrolizumab versus Observation in Muscle-Invasive Urothelial Carcinoma
背景:高リスク筋層浸潤性尿路上皮癌の根治手術後、再発リスクが高い。術後補助療法としてのペムブロリズマブの有効性を評価。
方法:第3相試験で、患者をペムブロリズマブ群(200mgを3週ごとに1年間投与)と経過観察群に無作為に割り付け。主要評価項目は無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)。
考察:ペムブロリズマブ群は経過観察群と比較してDFSが有意に延長(29.6ヵ月 vs. 14.2ヵ月、ハザード比0.73、P=0.003)。グレード3以上の有害事象はペムブロリズマブ群で50.6%、経過観察群で31.6%に発現。
N Engl J Med, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39282902/

筋層浸潤性尿路上皮癌根治術後のペンブロ1年間投与で、有意に予後が延長。
尿路上皮癌は、腎盂、尿管、膀胱、尿道などの尿路の上皮(粘膜)に発生する悪性腫瘍。
小児の急性合併症のない虫垂炎に対する虫垂切除術と抗生物質の比較:非盲検、国際、多施設、無作為化、非劣性試験
タイトル:Appendicectomy versus antibiotics for acute uncomplicated appendicitis in children: an open-label, international, multicentre, randomised, non-inferiority trial
背景:小児の急性単純性虫垂炎に対する標準治療は虫垂切除術であるが、抗生物質治療の有効性も検討されている。
方法:国際的な多施設共同非盲検ランダム化非劣性試験。小児患者を虫垂切除群と抗生物質治療群に無作為に割り付け、1年後の治療成功率を比較。
考察:抗生物質治療は虫垂切除術と比較して非劣性を示し、小児の急性単純性虫垂炎に対する有効な治療選択肢となり得る。
Lancet, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39826968/

小児の穿孔してない虫垂炎には、抗生剤投与でよさそう。
いきなりオペは嫌だよね。
重症孤立性三尖弁閉鎖不全症に対する経カテーテル的修復術(T-TEER): Tri.Fr無作為臨床試験
タイトル:Transcatheter Edge-to-Edge Repair for Severe Isolated Tricuspid Regurgitation: The Tri.Fr Randomized Clinical Trial
背景:重度の孤立性三尖弁逆流症患者における経カテーテル的修復術(T-TEER)の有効性を評価。
方法:フランスとベルギーの24施設で、重度の症候性三尖弁逆流症患者300人を対象に、T-TEERと最適化医療療法(OMT)併用群とOMT単独群に無作為に割り付け。主要評価項目は、NYHA分類の変化、患者の全体的評価、および主要心血管イベントの発生を含む複合臨床エンドポイント。
考察:T-TEER併用群は、OMT単独群と比較して、三尖弁逆流の重症度の低下および患者報告アウトカムの改善を示した。
JAMA, 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39602173/

T-TEER(ティーティーイーアール)か。カテーテル治療がどんどんすすんでる。
こんな治療 (動画のリンクです)。
腫瘍微小環境におけるミトコンドリア移入による免疫回避
タイトル:Immune evasion through mitochondrial transfer in the tumour microenvironment
背景:癌細胞は腫瘍微小環境でT細胞攻撃を回避するため、さまざまな免疫逃避メカニズムを利用する。
方法:臨床検体を分析し、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と癌細胞間でミトコンドリアDNA(mtDNA)変異の共有を調査。癌細胞からTILへのミトコンドリア転移の影響を評価。
考察:癌細胞からTILへのミトコンドリア転移は、TILの代謝異常と老化を引き起こし、抗腫瘍免疫応答を低下させる。この現象は、免疫チェックポイント阻害剤の効果予測において重要な因子となる可能性がある。
Nature, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39843734/

岡山大学からの革新的な論文!日本人すごい!
こういう研究ができるのは楽しいだろうな。
高リスク、早期、ER+ /HER2(-)乳癌におけるペムブロリズマブと化学療法:無作為化第 3 相試験
タイトル:Pembrolizumab and chemotherapy in high-risk, early-stage, ER+/HER2- breast cancer: a randomized phase 3 trial
背景:高リスク早期エストロゲン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(ER+/HER2-)乳癌におけるペムブロリズマブ併用新補助化学療法の有効性を評価。
方法:未治療のER+/HER2-グレード3高リスク浸潤性乳癌患者を対象に、ペムブロリズマブ併用群とプラセボ併用群に無作為割り付け。主要評価項目は病理学的完全奏効率(pCR)と無イベント生存期間(EFS)。
考察:ペムブロリズマブ併用群はプラセボ併用群と比較して、pCR率が24.3%対15.6%と有意に高かった(P=0.00005)。EFSのデータは未成熟。
Nat Med, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39838117/

免疫チェックポイント阻害薬は多くの癌で予後を伸ばす。
あとは効果予測因子をより詳細に解明することが重要。
局所進行直腸癌に対するネオアジュバント化学放射線療法とPD-1遮断の併用/非併用:無作為化第2相試験
タイトル:Neoadjuvant chemoradiation with or without PD-1 blockade in locally advanced rectal cancer: a randomized phase 2 trial
背景:局所進行直腸癌におけるPD-1阻害剤併用の術前化学放射線療法の有効性を評価。
方法:中国の複数施設で、局所進行直腸癌患者を対象に、標準的な術前化学放射線療法(CRT)単独群と、CRTにPD-1阻害剤(トリメリマブ)を併用する群に無作為に割り付け。主要評価項目は病理学的完全奏効率(pCR)。
考察:PD-1阻害剤併用群は、CRT単独群と比較してpCR率が有意に高かった(30.4% vs. 12.5%)。有害事象の発生率は両群で類似しており、PD-1阻害剤の併用は安全で効果的な可能性が示唆された。
Nat Med, 2025年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39762418/

症例は少ないけど圧倒的な有効性。予後でもかなり差がつきそう。
もはやMSIとか関係なく効果がある様子。第3相試験が待ち遠しい。
まとめ
癌の分野では、周術期の免疫チェックポイント阻害薬の有用性がどんどん発表されてるようです。
クリニックで働く医師はアンテナを高くしとかないと、すぐにおいてかれますね。

久しぶりに論文をまとめてみました。
こつこつ続けていきます。
できることを最大限に。がむしゃら院長でした。
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