
今日もお疲れさまです。
診療や経営に追われていると、論文チェックはつい後回しになりがちです。今回は、ここ1か月で気になった最新論文をピックアップしてみました。短くまとめていますので、通勤時間や休憩中にぜひどうぞ。
Pubmedへのリンクも貼ってますので詳しく確認したい方はそちらからお願いします。

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- 2025年11月の論文紹介です
- 免疫チェックポイント阻害薬関連心血管毒性:国際心腫瘍学会(ICOS)ポジションステートメント
- 女性における超加工食品摂取と若年発症大腸癌前駆病変リスクの関連
- 臨床T4a胃癌に対するD2郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除術と開腹手術の比較:UMC-UPPERGI-01無作為化臨床試験
- 根治目的胃癌手術における低侵襲胃切除術と開腹胃切除術の治療成績比較:人口ベースコホート研究
- 切除可能大腸癌における腫瘍情報を用いた個別化ctDNA検出法と再発との関連:前向き観察研究
- 大腸癌肝転移に対する肝切除の腫瘍学的成績のベンチマーキング:代替治療評価のための LiverMetSurvey 参照値
- ロボット支援手術と腹腔鏡手術における減量手術の安全性比較
- 症候性ネイティブ大動脈弁閉鎖不全症に対するTrilogy弁を用いた経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI):ALIGN-AR中核多施設単群試験
- 切除可能および境界切除可能膵管腺癌(Stage I–III)に対する術前mFOLFIRINOXとPAXGの比較:第III相2×2要因無作為化試験(PACT-21 CASSANDRA)第1ランダム化解析結果
- 日焼けと皮膚有棘細胞癌の関連:メタ解析
- まとめ
2025年11月の論文紹介です
2025年11月に発表された論文から10編をご紹介します。気になったものから読んでみてください。
免疫チェックポイント阻害薬関連心血管毒性:国際心腫瘍学会(ICOS)ポジションステートメント
背景:免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は多くのがんで生存を改善した一方、心筋炎、不整脈、心不全、血管イベントなどの心血管毒性が報告されており、体系的な評価・管理指針が求められていた。
方法:国際心腫瘍学会(ICOS)が、免疫療法と心血管毒性に関する既存エビデンス、臨床研究、専門家合意をレビューし、リスク評価、診断、モニタリング、治療、再投与判断に関する実践的提言をまとめた。
考察:ICI関連心血管毒性は頻度は低いが致死的となり得るため、治療前のリスク層別化、治療初期の厳格なモニタリング(心電図、トロポニン、心エコー)が重要とされた。疑われた場合は迅速なICI中止と高用量ステロイド治療が推奨され、多職種連携(腫瘍内科・循環器)の重要性が強調された。今後は標準化された診断基準と前向き研究が必要と結論づけられている。
JAMA Oncol, 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41231466/


ICI関連心血管毒性に対しては迅速なICI中止と高用量ステロイド治療が推奨
知らないと対応できない。勉強が大事。
女性における超加工食品摂取と若年発症大腸癌前駆病変リスクの関連
背景:若年発症大腸癌(50歳未満)は増加傾向にあるが、その原因は不明な点が多い。超加工食品(UPF)の摂取増加が発症リスクに関与する可能性が指摘されていた。
方法:米国の前向きコホート研究(看護師健康調査)に参加した女性を対象に、食事調査票からUPF摂取量を評価。内視鏡検査で確認された大腸腺腫や鋸歯状病変を若年発症大腸癌の前駆病変として、摂取量との関連を多変量調整モデルで解析。
考察:超加工食品の摂取量が多い女性では、若年期における大腸腺腫・前駆病変のリスクが有意に高かった。特に加工肉、甘味飲料、精製穀類由来のUPFがリスク上昇と関連していた。若年発症大腸癌増加の背景として食生活の質が重要であり、一次予防の観点からUPF摂取抑制の意義が示唆された。
JAMA Oncol, 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41231486/


加工肉、甘味飲料、精製穀類由来の加工食品は大腸腺腫のリスクが高い
前から言われてたけど実際にそうなのか。でも気にしてたら食事できないよね。
臨床T4a胃癌に対するD2郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除術と開腹手術の比較:UMC-UPPERGI-01無作為化臨床試験
背景:臨床T4a胃癌ではD2リンパ節郭清を伴う開腹手術が標準とされてきたが、腹腔鏡手術の腫瘍学的安全性は十分に検証されていなかった。
方法:中国多施設で実施された無作為化比較試験。臨床T4a胃癌患者を、腹腔鏡下幽門側胃切除+D2郭清群と開腹幽門側胃切除+D2郭清群に割付。主要評価項目は3年無病生存(DFS)、副次評価項目に全生存(OS)、周術期成績、合併症率を設定。
考察:腹腔鏡群は開腹群と比較して3年DFSおよびOSで非劣性を示し、R0切除率やリンパ節郭清数にも差は認められなかった。加えて、腹腔鏡群では出血量減少や術後回復の早さといった短期成績の改善が確認された。適切な施設・術者条件下では、臨床T4a胃癌に対しても腹腔鏡手術が安全かつ有効な選択肢となり得ることが示唆された。
JAMA Surg., 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41222957/


T4a胃癌に対しても腹腔鏡手術群は開腹手術群と比較して3年DFSおよびOSで非劣性
T4aでも非劣性か。早期胃癌だけラパロしてたのが懐かしい気がしてきた。
根治目的胃癌手術における低侵襲胃切除術と開腹胃切除術の治療成績比較:人口ベースコホート研究
背景:胃癌に対する低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット)は普及しているが、無作為化試験以外の実臨床(集団レベル)における長期成績の検証は十分ではなかった。
方法:全国がん登録および医療データベースを用いた人口ベース後ろ向きコホート研究。根治目的で胃切除を受けた胃癌患者を対象に、低侵襲胃切除術と開腹胃切除術を比較。傾向スコア法で背景を調整し、全生存(OS)、短期周術期成績、再入院率を解析。
考察:低侵襲胃切除術は開腹手術と比較して全生存に差を認めず、腫瘍学的に同等であった。一方、低侵襲群では術後合併症や在院日数が少なく、周術期成績が良好であった。集団レベルでも、適切な患者選択と施設条件下で低侵襲胃切除術は安全かつ有効な標準治療となり得ることが示唆された。
Ann Surg., 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40772642/


低侵襲胃癌切除術は開腹手術と比較して全生存に差を認めず、腫瘍学的に同等
安全にできるなら開腹する意味がなくなる。田舎ではラパロ、都会ではロボットになる。
切除可能大腸癌における腫瘍情報を用いた個別化ctDNA検出法と再発との関連:前向き観察研究
背景:大腸癌術後の再発リスク評価は主に病理学的因子に依存しており、より高感度で個別化された分子マーカーが求められていた。腫瘍情報に基づくctDNA解析は、微小残存病変(MRD)の検出手段として注目されている。
方法:切除可能大腸癌患者を対象とした前向き観察研究。各患者の腫瘍組織から個別の変異プロファイルを同定し、それに基づくパーソナライズドctDNAアッセイを用いて術後血中ctDNAを縦断的に測定。ctDNA検出と再発、無再発生存(RFS)との関連を解析。
考察:術後ctDNA陽性は再発リスクと強く関連し、ctDNA陰性例と比較してRFSが著しく不良であった。ctDNAは画像診断よりも早期に再発を検出し得る可能性を示し、術後補助療法の選択やフォローアップ強度の個別化に有用なバイオマーカーとなることが示唆された。
Ann Surg., 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41177967/


切除可能大腸癌において術後ctDNAは画像診断よりも早期に再発を検出し得る可能性
うまくつかったら生存率が伸びそうな感じ。
大腸癌肝転移に対する肝切除の腫瘍学的成績のベンチマーキング:代替治療評価のための LiverMetSurvey 参照値
背景:大腸癌肝転移(CRLM)に対する肝切除は根治を目指せる標準治療だが、局所治療(焼灼、定位放射線、肝動注療法など)の進歩により、比較の基準となる「標準的な肝切除成績」の明確化が求められていた。
方法:国際レジストリである LiverMetSurvey に登録された大規模CRLM症例を解析し、根治切除が行われた患者を対象に全生存(OS)、無再発生存(RFS)、再発パターンを算出。腫瘍負荷や臨床因子で層別化し、治療成績の参照(ベンチマーク)値を提示。
考察:肝切除後の長期生存率および再発率に関する現実的かつ再現性の高い参照値が示され、肝切除は依然としてCRLM治療の基準であることが確認された。本研究で提示されたベンチマークは、焼灼療法や新規局所治療の有効性を評価する際の比較基準として有用であり、今後の治療選択や臨床試験設計に重要な役割を果たすと考えられる。
Ann Surg, 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40772629/


大腸癌肝転移に対する肝切除後の長期生存率および再発率に関する現実的かつ再現性の高い参照値が示された
いまいちわからんけど、これって重要なのかな。
ロボット支援手術と腹腔鏡手術における減量手術の安全性比較
背景:減量手術においてロボット支援手術は技術的利点が期待される一方、腹腔鏡手術と比較した安全性に関する大規模実臨床データは十分ではなかった。
方法:米国の全国外科データベースを用いた後ろ向きコホート研究。スリーブ状胃切除および胃バイパス術を受けた患者を対象に、ロボット支援手術と腹腔鏡手術の30日合併症、再手術、再入院、死亡率を傾向スコア調整後に比較。
考察:全体としてロボット支援手術と腹腔鏡手術の主要な短期安全性アウトカムに有意差は認められなかった。ロボット群では手術時間が長い一方、特定の合併症リスクは同等であり、経験豊富な施設では安全に実施可能と示唆された。費用や手術効率を含めた総合的評価が今後の課題とされた。
Ann Surg., 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41199628/


減量手術においてロボット支援手術と腹腔鏡手術の主要な短期安全性アウトカムに有意差は認められなかった
だったらお金のかからないほうがいいよね。内視鏡でやる内視鏡的スリーブ状胃形成術はどうなんだろう。
https://www.hosp.jikei.ac.jp/jikei/media/2941.html
症候性ネイティブ大動脈弁閉鎖不全症に対するTrilogy弁を用いた経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI):ALIGN-AR中核多施設単群試験
背景:重症大動脈弁閉鎖不全症(AR)では外科手術が標準だが、高齢・高リスク例では手術不適応となることが多い。一方、従来のTAVIデバイスはネイティブARに最適化されておらず、専用デバイスの有効性評価が求められていた。
方法:外科手術不適または高リスクと判断された症候性ネイティブAR患者を対象とした、前向き・多施設・単群のIDE試験。Trilogy弁によるTAVIを実施し、主要評価項目は30日および1年の安全性(死亡、重篤合併症)と有効性(AR改善、弁機能)。
考察:Trilogy弁によるTAVIは高いデバイス成功率を示し、大多数の患者でARは軽度以下に改善した。30日および1年死亡率は許容範囲内で、NYHA心機能分類やQOLも有意に改善。ネイティブARに対する経カテーテル治療の実現可能性を示し、手術不適応患者に新たな治療選択肢を提供する結果となった。
Lancet, 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41260228/


TAVIが大動脈弁狭窄症だけでなく大動脈弁閉鎖不全症にも使用されるようになる
すごいな。どんどんカテで治療できるようになってる。
切除可能および境界切除可能膵管腺癌(Stage I–III)に対する術前mFOLFIRINOXとPAXGの比較:第III相2×2要因無作為化試験(PACT-21 CASSANDRA)第1ランダム化解析結果
背景:切除可能/境界切除可能膵管腺癌では術前化学療法の最適レジメンは確立しておらず、mFOLFIRINOXと多剤併用PAXGの直接比較データが求められていた。
方法:国際多施設・非盲検・2×2要因の第III相RCT。Stage I–IIIの切除可能または境界切除可能PDAC患者を、術前mFOLFIRINOX群とPAXG群に無作為化(本解析は第1ランダム化)。主要評価項目は全生存(OS)、副次評価項目に無再発生存(DFS)、切除率、R0切除率、安全性。
考察:初回解析ではmFOLFIRINOXとPAXGの間でOSおよびDFSに有意差は認められず、両レジメンは腫瘍学的に同等と示唆された。毒性プロファイルは異なり、レジメン選択には患者背景や忍容性を考慮する必要がある。今後、2×2要因全体解析と長期追跡により最適な術前治療戦略の確立が期待される。
Lancet., 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41275879/


膵癌に対する術前化学療法はmFOLFIRINOXと同様にPAXG:P(パクリタキセル/nab-パクリタキセル)、A(アブラキサン)、X(シスプラチン)、G(ゲムシタビン)も有用
患者さんはPAXGの方がきつくないのかな?どうなんだろう。
日焼けと皮膚有棘細胞癌の関連:メタ解析
背景:日焼け(サンバーン)は紫外線曝露の指標とされるが、皮膚有棘細胞癌(cSCC)との関連は研究間で結果が一貫しておらず、定量的評価が必要であった。
方法:観察研究を対象としたシステマティックレビューおよびメタ解析。小児期・成人期の日焼け歴(頻度・重症度)とcSCC発症リスクの関連を、ランダム効果モデルで統合解析。
考察:日焼け歴はcSCCリスクの有意な上昇と関連し、特に頻回または重度の日焼けでリスク増加が顕著であった。年齢層を問わず関連が認められ、紫外線防御(衣類、日焼け止め、行動変容)の一次予防としての重要性が支持された。
JAMA Dermatol., 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40991277/


日焼け歴は皮膚有棘細胞癌リスクの有意な上昇と関連し、特に頻回または重度の日焼けでリスク増加が顕著
日焼け止めが大事。
まとめ
- ICI関連心血管毒性に対しては迅速なICI中止と高用量ステロイド治療が推奨
- 加工肉、甘味飲料、精製穀類由来の加工食品は大腸腺腫のリスクが高い
- T4a胃癌に対しても腹腔鏡手術群は開腹手術群と比較して3年DFSおよびOSで非劣性
- 低侵襲胃癌切除術は開腹手術と比較して全生存に差を認めず、腫瘍学的に同等
- 切除可能大腸癌において術後ctDNAは画像診断よりも早期に再発を検出し得る可能性
- 大腸癌肝転移に対する肝切除後の長期生存率および再発率に関する現実的かつ再現性の高い参照値が示された
- 減量手術においてロボット支援手術と腹腔鏡手術の主要な短期安全性アウトカムに有意差は認められなかった
- TAVIが大動脈弁狭窄症だけでなく大動脈弁閉鎖不全症にも使用されるようになる
- 膵癌に対する術前化学療法はmFOLFIRINOXと同様にPAXG:P(パクリタキセル/nab-パクリタキセル)、A(アブラキサン)、X(シスプラチン)、G(ゲムシタビン)も有用
- 日焼け歴は皮膚有棘細胞癌リスクの有意な上昇と関連し、特に頻回または重度の日焼けでリスク増加が顕著

癌でも心臓でも低侵襲手術、治療がすすんでる。内視鏡でダイエット手術ができたらいいけど、難しいんだろうか。
できることを最大限に。がむしゃら院長でした。



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