
診療の合間に、少しだけ最新論文を。
今回は、最近のPubMedから気になる論文を厳選してまとめました。流し読みでも頭に入るように工夫しています。情報の種としてお役に立てばうれしいです。
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- 2025年10月の論文紹介です
- 肥満と慢性腎臓病(CKD)の関係:KDIGO論争会議からの結論
- 思春期・閉経前女性におけるホルモン避妊薬の製剤別乳がんリスク:スウェーデン全国コホート
- 大腸癌における「治癒」の定義:再発リスクに基づく長期個票データ解析
- 甲状腺乳頭癌のAJCC分類に遺伝子情報を組み込む:国際多施設後ろ向きコホート研究
- 切除可能膵癌に対する低侵襲左膵切除術と開腹左膵切除術の比較:無作為化DIPLOMA試験の長期成績
- 米国における減量手術患者でのGLP-1受容体作動薬使用の実態
- 切除膵管腺癌におけるドライバー遺伝子変異と病理学的特徴および全生存との関連
- 腫瘍はマクロファージを鉄供給源として乗っ取り、骨転移と貧血を促進する
- 外科手術および経カテーテル僧帽弁接合修復(TEER)が不適な僧帽弁閉鎖不全症患者に対する経皮的経カテーテル僧帽弁置換術:多国籍前向き単群試験
- まとめ
2025年10月の論文紹介です
2025年10月に発表された論文から9編をご紹介します。気になったものから読んでみてください。
肥満と慢性腎臓病(CKD)の関係:KDIGO論争会議からの結論
背景:肥満と慢性腎臓病(CKD)は複雑に関連し、疫学・病態生理・治療戦略に関して合意形成が必要とされていたため、KDIGOが論争会議を開催した。
方法:国際専門家が集い、肥満と CKD の最新のエビデンスをレビュー。疫学、病態、予後、治療(行動変容、薬物療法、代謝手術など)について討議し、研究と臨床の優先事項を整理。
考察:長期・若年期からの肥満は CKD 発症リスクを高める。初期バイオマーカーの同定や評価法の改良が予防機会となり得る。GLP-1受容体作動薬など薬物療法や代謝・減量手術は体重・心血管・腎保護効果を持つ可能性が示され、患者中心の行動・栄養介入と多職種協働が重要とされた。今後、治療期間の最適化や新規療法の長期安全性評価が研究課題。
Kidney Int., 2025年10月(電子先行)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41176308/


長期・若年期からの肥満は CKD 発症リスクを高める。
減量が重要。そりゃそうだ。
思春期・閉経前女性におけるホルモン避妊薬の製剤別乳がんリスク:スウェーデン全国コホート
背景:ホルモン避妊薬は広く用いられるが、乳がんリスクが「ホルモン成分(特にプロゲスチン種類)」でどの程度異なるかは不明だった。
方法:スウェーデン全国レジストリ連結の人口ベースコホート。2006年1月時点で13–49歳・既往なしの2,095,130人を2019年まで追跡し、製剤・投与経路別の使用歴/期間と乳がん発症を時間依存Coxで解析。
考察:ホルモン避妊薬の使用は乳がんリスク増加と関連(HR 1.24)。併用製剤(HR 1.12)とプロゲスチン単独(HR 1.21)いずれも関連し、デソゲストレル含有やエトノゲストレルインプラントで相対的に高め。一方、一部製剤では有意な増加なし。使用期間が長いほどリスクは段階的に上昇し、処方時に成分差を考慮する必要性を示唆。
JAMA Oncol., 2025年10月30日(Online ahead of print)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41165687/


ホルモン避妊薬の使用は乳がんリスク増加と関連。併用製剤とプロゲスチン単独、いずれも関連。
プロゲスチン単独で乳がんが増えるのはなんでだろう?
大腸癌における「治癒」の定義:再発リスクに基づく長期個票データ解析
背景:大腸癌術後に「治癒」と判断できる時点は明確でなく、患者説明やフォローアップ期間の設定にばらつきがあった。
方法:ステージII–III結腸癌で根治手術+補助化学療法を受けた35,213例を、15件の第III相RCT個票データから解析。再発を主要イベントとし、死亡や二次がんは競合リスクとして扱い、術後10年以上追跡。
考察:再発は術後6–12か月でピークを示し、その後減少。術後6年以降は年間再発率が0.5%未満で安定した。術後6年を「臨床的治癒」と定義することは、長期サーベイランス簡略化や患者説明に有用と示唆された。
JAMA Oncol., 2025年10月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41037274/


大腸癌術後6年以降は年間再発率が0.5%未満で安定。
大腸癌は術後6年で臨床的治癒と定義する、か。
甲状腺乳頭癌のAJCC分類に遺伝子情報を組み込む:国際多施設後ろ向きコホート研究
背景:甲状腺乳頭癌(PTC)の標準的病期分類であるAJCC分類は臨床パラメータに基づくが、遺伝子変異情報を加えることで予後予測精度が高まる可能性が示唆されていた。
方法:15か国の医療機関から1979〜2023年に治療された4,746例のPTC患者を収集し、BRAF^V600E と TERT プロモーター(TERTp)変異を腫瘍由来DNAで解析。従来のAJCC第7版および第8版病期と、遺伝子状態を組み込んだ修正分類との予後(がん特異死亡率)を比較した。
考察:BRAF^V600E と TERTp の同時変異は、従来のAJCC病期いずれのステージでもがん特異死亡率を有意に増加させた。TERTp 変異単独もステージIVで死亡リスクを上昇させた。野生型ではステージI–III(旧7版)およびI–II(新8版)で生存曲線が平坦であり、遺伝子情報の追加は病期分類の予後予測能を改善することを示唆する。
Lancet Oncol., 2025年10月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41038186/


甲状腺乳頭癌においてBRAF^V600E と TERTp の同時変異は、いずれのステージでもがん特異死亡率を有意に増加
さらに予後をよくできそう
切除可能膵癌に対する低侵襲左膵切除術と開腹左膵切除術の比較:無作為化DIPLOMA試験の長期成績
背景:左膵切除術において低侵襲手術(腹腔鏡/ロボット)は短期成績の改善が示唆されてきたが、膵癌に対する長期の腫瘍学的安全性は無作為化試験で十分に検証されていなかった。
方法:切除可能な膵体尾部癌患者を対象に、低侵襲左膵切除術(MILP)と開腹左膵切除術(OLP)を比較した多施設無作為化比較試験(DIPLOMA)。主要評価項目は長期全生存(OS)、副次評価項目として無再発生存(DFS)、局所再発率、病理学的根治性を解析。
考察:長期追跡の結果、MILPとOLPの間で全生存および無再発生存に有意差は認められず、低侵襲手術は腫瘍学的に非劣性であることが示された。短期成績の利点(出血量減少、回復促進)を踏まえると、適切な症例選択と専門施設においてMILPは標準的選択肢となり得る。
JAMA Surg. 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41060640/


切除可能膵癌に対する低侵襲左膵切除術は標準術式になりうる
通常の手術で開腹手術はなくなりそう
米国における減量手術患者でのGLP-1受容体作動薬使用の実態
背景:GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は肥満治療として急速に普及しているが、減量手術前後での使用実態や時系列的な位置づけは明らかでなかった。
方法:米国の大規模保険請求データを用いた後ろ向きコホート研究。2018~2023年に減量手術を受けた成人を対象に、手術前後でのGLP-1RA処方割合、使用開始時期、患者背景を記述的に解析。考察:減量手術患者におけるGLP-1RA使用は年々増加し、特に手術前の使用が顕著であった。術後にも一定割合でGLP-1RAが使用されており、薬物療法と手術療法が競合ではなく補完的に用いられている実態が示された。今後は、最適な併用・導入タイミングや長期アウトカムへの影響の検討が必要とされる。
JAMA Surg., 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40864458/


減量手術後にも一定割合でGLP-1RAが使用されている
結局つかうのか。
切除膵管腺癌におけるドライバー遺伝子変異と病理学的特徴および全生存との関連
背景:膵管腺癌(PDAC)では KRAS、TP53、CDKN2A、SMAD4 などのドライバー遺伝子変異が高頻度に認められるが、切除例において遺伝子変異プロファイルと病理学的悪性度や予後との関連は十分に整理されていなかった。
方法:根治切除を受けたPDAC患者を対象に、腫瘍組織の次世代シーケンスにより主要ドライバー遺伝子の変異状況を解析。遺伝子変異の組み合わせと、腫瘍分化度、リンパ節転移、切除断端、神経浸潤などの病理学的因子および全生存(OS)との関連を検討。
考察:TP53やSMAD4変異を有する腫瘍は低分化、リンパ節転移陽性、神経浸潤と関連し、全生存が不良であった。一方、KRAS単独変異例は比較的良好な病理学的特徴と予後を示した。ドライバー遺伝子変異の組み合わせは、切除PDACの生物学的悪性度と予後層別化に有用であり、術後治療戦略の個別化に寄与する可能性が示唆された。
Ann Surg. , 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40528743/


切除可能な膵管腺癌でTP53やSMAD4変異を有する腫瘍は全生存が不良。一方、KRAS単独変異例は比較的予後良好。
膵癌も個別化医療がすすんでいく。
腫瘍はマクロファージを鉄供給源として乗っ取り、骨転移と貧血を促進する
背景:がんの骨転移は重篤な合併症であり、貧血を伴うことも多いが、腫瘍がどのように骨髄微小環境や全身鉄代謝を利用して進展するかは十分に解明されていなかった。
方法:マウス骨転移モデルおよびヒト検体を用い、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の鉄代謝制御、フェロポルチン発現、腫瘍細胞への鉄供給機構を分子・細胞生物学的手法で解析。骨転移形成、腫瘍増殖、貧血指標への影響を評価。
考察:腫瘍はマクロファージの鉄放出機構を再プログラムし、鉄を腫瘍細胞に供給することで骨転移を促進していた。この過程は骨髄での赤血球造血を障害し、がん関連貧血を悪化させる。マクロファージの鉄代謝経路を標的とする治療は、骨転移抑制と貧血改善の両立につながる新たな治療戦略となり得る。
Cell. , 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40907490/


腫瘍はマクロファージを鉄供給源として乗っ取り、骨転移と貧血を促進する
新しい。鉄代謝経路も治療ターゲットになる。
外科手術および経カテーテル僧帽弁接合修復(TEER)が不適な僧帽弁閉鎖不全症患者に対する経皮的経カテーテル僧帽弁置換術:多国籍前向き単群試験
背景:重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)では外科手術やTEERが標準治療だが、高齢・併存疾患・解剖学的理由により、いずれも適応外となる患者が一定数存在し、治療選択肢が限られていた。
方法:外科手術およびTEERが不適と判断された重症MR患者を対象に、経皮的経カテーテル僧帽弁置換術(TMVR)を実施した前向き・多国籍・単群試験。主要評価項目は30日および1年の安全性(死亡、重篤合併症)と有効性(MR改善、機能分類)。
考察:TMVRは高い手技成功率を示し、多くの患者でMRは軽度以下に改善した。NYHA心機能分類やQOLも有意に改善し、従来治療が困難であった患者群に対する有望な治療選択肢となる可能性が示唆された。一方で、周術期合併症や長期耐久性の評価にはさらなる追跡が必要とされる。
Lancet. , 2025年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41167201/


僧帽弁閉鎖不全症患者に対する経皮的経カテーテル僧帽弁置換術置換術は有望。
マイトラクリップの次の治療があるのか。カテーテル治療もすすんでる。
まとめ
- 長期・若年期からの肥満は CKD 発症リスクを高める。
- ホルモン避妊薬の使用は乳がんリスク増加と関連。併用製剤とプロゲスチン単独、いずれも関連。
- 大腸癌術後6年以降は年間再発率が0.5%未満で安定。
- 甲状腺乳頭癌においてBRAF^V600E と TERTp の同時変異は、いずれのステージでもがん特異死亡率を有意に増加。
- 切除可能膵癌に対する低侵襲左膵切除術は標準術式になりうる。
- 減量手術後にも一定割合でGLP-1RAが使用されている。
- 切除可能な膵管腺癌でTP53やSMAD4変異を有する腫瘍は全生存が不良。一方、KRAS単独変異例は比較的予後良好。
- 腫瘍はマクロファージを鉄供給源として乗っ取り、骨転移と貧血を促進する。
- 僧帽弁閉鎖不全症患者に対する経皮的経カテーテル僧帽弁置換術置換術は有望。

いろんな領域から論文を読んでみました。どの領域も知らないうちにすすんでますね。
できることを最大限に。がむしゃら院長でした。



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